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TOKYO SUKIYA LOVE STORY (1)

「俺達の仲」に

歪(ひず)みを作ってしまったのは

わたしから。そして

わたしだけ。





きみは気づかない。





「嫌い」はひとつで

「好き」はふたつ。





厄介なほうの「好き」を

抱えてしまったのは

わたしだけ。





きみは気づかない。





――TOKYO SUKIYA LOVE STORY.















ACT1:すき家なう。~出逢い~



***



「あーー超お腹減ったしっっ♪♪」





なあんて、昔流行ったネットスラングを

天を仰ぎながら絶叫するあたしは

吉野 松子(ヨシノ マツコ)。



トーキョーでハイパーにメディアを

クリエイトしちゃってる(仮)

24歳! 女子! 社会人三年目! 



三年目に入ってからウルトラ残業まみれで

今日ももう23時! やんなっちゃう!





なあんて、ね。

ホントはそんなに、嫌でもないんだ。

あたしには、これから「おたのしみコース」が待ってるから。



「おたのしみコース」ってのは、ね。

Pバルーンを駆使してブルとポンキーを

避けて避けて避けないとクリアできない

あの「おたのしみコース」じゃなくって、



23時にすき家でゴハンを食べること。





え?

「そんなに牛丼が好きなのか。」って?

ううん、牛丼なんて、どうでもいいの。

専らあたしのお目当ては、

23時にいつもすき家に出勤している

チャン・グ●ソク似の彼、キムさん。





キムさんに水をもらい、注文を聞いてもらい、

丼をもらい、お金を渡す。

それだけのために、あたしは平日の23時。

毎日会社最寄りのすき家に通っている。









***



「イラッシャイマセー。ゴチュウモン、ドウゾー。」

慣れた手つきで、あたしに水をくれるキム。

「並ください。」

メニューも見ずに答えるあたし。



だって興味ないし。

ここに居て、キムを眺める権利を得られるなら、

丼の中身なんて、別に何だっていいし。





「ナミイッチョー!!」



調理スペースに向かってそう叫ぶキムは、

今日もあたし史上最強に、ワイルドかつクール。

そんな余韻に浸りながら、キムがくれた水をひとくち飲む。

プラスティック製のグラスはいつも良い具合に滴っていて、

若干のエロスを感じてしまうのは何故だろう。

キムがかっこいいから?? それとも今が23時だから??

まぁ、どっちでもいいけど。グラスの微々たるエロスより

今はキムのイ・ロ・ケ☆





「ナミデース。」



キムが並を運んでくれた。

嬉しい。

でも、あたしはどうしても、この丼を好きになれない。

たっぷりすぎる白ごはんに、ほんの少しのお肉。

延々と続く、薄甘い醤油味。

いつもスプーン5杯くらいで飽きちゃう。

今日も薄汚れた感じの白ごはんが、かなり残ってしまった。

これで280円は正直痛い。

でもまぁ、キムのことを思えば全然だよね。










***



「アリガトーゴザイマース。オカイケーコチラデスー。」

あたしが立ち上がると同時に、

キムがあたしをレジへと誘導してくれる。

嬉しいな。



いそいそと鞄を持ち上げ、ようとしたら。

「あ、ごめんなさい。」

隣の人のタブレットに鞄をぶつけてしまった。



「………。」



タブレットの持ち主に睨まれる。

あたしと同い年くらいの、四角い黒ぶち眼鏡のリーマン。

もやしな感じ。神経質な感じ。

やな感じ。





ほんと、やな感じ。謝ったじゃん。

こんな狭いお店で、そんなバカでかい

タブレット使う方が悪いんじゃん。

食事に集中しろっての。



って言ってやりたかったけど、

この人、人相悪いし

ナイフとか持ってそうだったから、押し殺した。

代わりにタブレットを睨みつけてみる。





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すき家なう。隣の女が並をメッチャ残してる。すき家への冒涜だ。つか、女はすき家に来んな。品位が損なわれる。
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***



……Twitterかよ。

こんなバカでかいタブレットで敢えてTwitterかよ。

そして内容、明らかにあたしにケンカ売ってるし。

何ですき家に女が居たら、品位が損なわれるのよ。



てゆーか、すき家の品位って??



まぁ、どうでもいいけど。どうでもいいけどさ。

売られたケンカは買う主義なんだわ。





鞄を置き、席に着き直す。

キムがレジで、えっ、てなってるけど、仕方無い。

スプーンを手に取り、薄汚れた白ごはんに

とりあえず喰らいつく。



薄甘い……。延々薄甘い……。

無理。





「……ククッ。」



!!!

え、なに。

今、隣のタブレット野郎、笑った??

反射的にタブレットの画面を覗く。





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隣の女が肉の配分ミスったのか黙々と白飯だけ食ってるwwwだっせぇwww
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「こんなバカでかいタブレットで

Twitterやってる方がだっせぇんだよっ!!」






タブレットを奪い取って怒鳴るあたし。

それを呆然と見上げるタブレット野郎。





――こうして、あたしの「すき家ストーリー」は

幕を開けたのだった。










ACT2に続く。



***





【勢いで書いた。後悔はしていない。】



久々にすき家ネタで何か書きたいなぁ、と思って、

一番最初に思いついたフレーズが

「東京すき家ラブストーリー」だった。





ホントそれだけ。

後は何のプロットも立てず、

ただただ、すき家での日常を反芻しつつ、

「マジおたのしみコース鬼畜なんだけど」と愚痴りつつ、書いた。





そしたらこんなことになった。

10代の頃、友達少なくて暇だったから

気休めに書いていたラノベみたいになった。





すき家が舞台のラノベとか誰が得すんだろうね。

分かんない。

分かんないけど、もう走り出しちゃったから、

「ACT2に続く」らしいから、書くよ。

冒頭の切ない系フラグをどういうルートで回収するのかさえ

全く考えてないけど、書くよ。





そんなわけで、ACT2に続く。

次の更新半年後になるかもしれんけど、たぶん、続く。
by ikako_pa_rara | 2012-08-08 00:02 | Fiction.
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勢いで上京した人の自堕落な追憶
by ikako_pa_rara