カテゴリ:Fiction.( 6 )

はるは、いつくる。

なかったことにしようとしても

なかったことにできないのは

ほんとうのこと。



そしたら

なかったことにできた

あのひとのことは

ほんとうじゃなかったんだ、

って



おもうと

かなしい。



なかったことにしたかったのに

なかったことにできたのに



なんでか

かなしい。



あんなにかなしかったのに

こんなにかなしいのに

ほんとうじゃないなんて

さ。



そんなこと

きせつはずれの

さむぞらのした

おもいながら

アークロイヤルの

パラダイスティーに

あかりともす、よる。

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by ikako_pa_rara | 2013-04-29 23:37 | Fiction.

TOKYO SUKIYA LOVE STORY (3.5)

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今回は番外編です。読み飛ばしていただいても、本編の進行には影響しません。たぶん。

『TOKYO SUKIYA LOVE STORY』 が初めての方は ↓ をお先にどうぞ。

ACT1  ACT2  ACT3

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唐突すぎる出会いを経て、何だかんだで

すき家で共に過ごす夜が増えていく、ふたり。



ふたりの距離感は、とても近いようで、でも、

決して縮まってはいない。



それを互いにどう感じているかは

フタを開けてみなきゃ、分からない。

できることなら、開けて確かめたい。

互いの中身が同じかどうか。



でも、今は……開けないでおこう。



だって、互いの中身が違えば、

ふたりは、もう、ふたりでいられないから。



いいじゃない。

確かめなくたって。

だって、今こうして

ふたりがふたりでいられるってこと、



壊したくない。





――TOKYO SUKIYA LOVE STORY.















ACT3.5:ねぇ、知ってる?

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by ikako_pa_rara | 2012-10-08 00:33 | Fiction.

TOKYO SUKIYA LOVE STORY (3)



誰も知らない彼の姿を毎日見てる。

それだけで、

彼の全てを知った気になっていた。


あたしに映る彼は

誰にも見えないのは確かだけれど

その姿だって、彼を構成する、

ほんの一部に過ぎないというのに。


あたしの前に居る彼が

あまりにも近すぎて

あたしの中に居る彼が

彼の全てと錯覚した。





間違いだった。





――TOKYO SUKIYA LOVE STORY.















ACT3:中盛のススメ  ~始動~



***




【主な登場人物(詳細適当)】


・吉野 松子(ヨシノ マツコ)
主人公。女。高校時代は陸上部に憧れつつ生物部に所属。走るのは嫌いじゃない。
会社最寄りのすき家店員「キム」が気になっていたが、
ふとしたことから店で迷惑行為を犯し、気まずい感じに。



・キム
松子の会社最寄りのすき家店員。チャングンなんとかさんに似てる。
松子の迷惑行為には事務的に対応。



・タブレット野郎
すき家で松子の隣に居たリーマン。自分を虐げられることに抵抗は無いが、
バカでかいタブレットとすき家を冒涜するやつは許さない。
会社最寄りのすき家を最低2軒は把握している、健全な東京社畜。










【これまでのあらすじ(超粗め)】
会社最寄のすき家に、店員のキム目当てで通っていた吉野松子(24)は、なんやかんやでタブレット野郎と店内で口論になる。そのせいでキムと気まずい感じになった松子は、会計を済ませてすぐ店を出るが、間違ってタブレット野郎のタブレットをパクってしまう。それをきっかけに、松子を追ってきたタブレット野郎と再度口論に。しかし「すき家を冒涜するやつは許さない!」と言いつつも、何故か松子に「すき家に対する冒涜精神を叩き直してやる!!」と買って出て、先程まで居た店舗とは別のすき家へと松子を誘う、タブレット野郎。所謂ちょっと何言ってんのか分かんないです状態の松子だが、なんやかんやでタブレット野郎について行くことに。果たして松子の運命は??










***



タブレット野郎の言ったとおり、

キムが居るすき家の近くにあるデパートから

高速の下を横切る感じで、5分ちょっと真っ直ぐ歩いたところに

すき家はあった。

隣のパスタ屋さんの方が明らかに惹かれたけど、渋々ついていく。





「いらっしゃいませー! お好きな席にどうぞー!」

キムじゃない誰かが、キムと同じことを言う。



キムの店舗と同じくオフィス街にあるせいか、雰囲気は似ていた。

死んだ深海魚のような目をしたリーマンが、ぽつりぽつりと居る感じ。

テーブル席が若干多いことと、キムが居ないこと以外は、

キムの店舗と、ほぼ変わりない。









***




「おい。」

タブレット野郎が眉間にシワ寄せて、あたしのシャツの袖を引っ張る。

「え、あ、何?」

「何? じゃねーよ。突っ立ってないで早く座れよ。」

見ると、いつの間にか奥のテーブル席の前に、あたしは立っていて

タブレット野郎はもう座ってメニュー広げて、水を飲んでいた。



タブレット野郎と向き合って座る。

今更だけど、何か変な感じ。

昨日まで顔も知らなかった男と、さっきまで喧嘩していた男と、

今はこうして、向かい合って座って、すき家でメニューを広げているなんて。





「てゆーか……すき家にメニューなんてあったんだ。」

「あ?」

あたしのつぶやきを聞いて、タブレット野郎がますます眉間にシワを寄せる。

「お前それマジで言ってんの?」

「マジマジ。牛丼しか置いてないと思ってた。」

「………。」

「カレーとか売ってるんだね。」

「……店の前にある幟(のぼり)とか、他の客が食ってるもんとか、見ねぇのかよ。」

「あたし基本、すき家ではキムしか見てなかったから。」

「だからキムって誰だよ。」

「まーいいや。過去の話は、ね。

それよりさ、あたしの 『すき家冒涜精神』 とやらを、叩き直してくれるんでしょ? 

どうしたらいいの?」










***




「店員が来たら、今から俺の言うとおりにオーダーね。」

「ほう。」

「3点セット。」

「3点もあるの?」

「オロシポンズギュードンチューモリアオネギトンジルタンピン」

「ちょいちょいちょいちょい! 早い早い、早いって!!」



焦ってストップかける私を、眉間にシワつけたまま睨むタブレット野郎。

しょうがないじゃん。

メニュー見ずに呪文みたいに、だーーーって言うんだもん。

『中盛』 しか聞き取れなかった。



「ねぇ、中盛って言った?」

「言った。」

「あと20分程で日付が変わろうとしている最中、まさかの中盛?」

「いけるだろ。余裕で。俺の勘ではお前は小食ではない。」

「失礼にも程があるわ。真実だけども。

でもなー、量が多いとますますご飯残っちゃう気がする……。」





「だーかーら、『中盛』 なの。」

「え??」

「そのキョトン顔、どーせ中盛の定義を知らないんだろ。」

「定義も何も、並より量が多いんでしょ?」

「じゃあ聞くけど、『何の』 量が多い?」

「何の、って……全体的に?」

「ほら分かってない。」

「えー??」










***





「よく見ろ。」


そう言ってタブレット野郎は、バカでかいタブレットをあたしに突き付けてきた。

バカでかいタブレットには、すき家の公式サイトらしきものが映っている。

いつの間に、この画面出したんだろう。


「えーっと……?

『すき家の牛丼中盛。お肉は並の6割増し! ごはんは並より少なめ!』

……えっ! そうなの!?」


「そ、中盛は、並より具が1.6倍で、飯は並より若干少ない。」



そうかぁ、中盛かぁ。

お肉が多いなら、最後まで飽きずに食べられるかも。





「今、『中盛ならイケるかも』 って思ったろ。」

「え、あ、あ、はい。」

何で分かったんだろう。バカでかいタブレットにセンサー付いてる?

「お前の顔に書いてあんだよ。タブレットは関係ねぇ。」

「………。」

「甘いんだよ。単純に肉の量を増やしたからって、同じ味が続くことに変わりはないだろ。」

「確かに。でも、だったらどうすればいいの?」

「そこで、『おろしポン酢』 と 『青ねぎ』 の出番なんだな。」



ドヤ顔で言うタブレット野郎。

さっきから何でこいつはこんな、上から来るんだろう。

イラッとする。初対面なのに。



それでも話を聞いてしまうのは……。

奴への苛立ちより、すき家への興味が勝っているから?










***



「おろしポン酢と青ねぎは、牛丼のトッピングなの?

なんか、ピザみたいだね。」


気がついたら身を乗り出して話していた。

そしたら向こうも身を乗り出してきて、ちょっとだけ笑った。

ドヤ顔に紛れさせる感じで、ちょっとだけ。


「大体合ってる。

ただ、『おろしポン酢』は『おろしポン酢牛丼』って頼めば

自動的に付いて出てくる。

その『おろしポン酢牛丼』に、さらに『青ねぎ』を足すわけだな。

ピザに例えると、マルゲリータに

バジルをトッピングするようなもんだな。」


「ほんとだ。メニューに『おろしポン酢牛丼』って、書いてある。

でも、何で青ねぎを足すの?

メニューの写真を見る感じでは、大根おろしと、

若干の青ねぎが乗っているようだけど……。」


「その青ねぎはフェイクだ。」

「フェイク?」

「足りないんだよ。その量じゃ青ねぎのフレッシュ感は、活きない。」

「フレッシュ感……。」


「並より1.6倍に増えた肉を、最後まで持て余さずに楽しむには

それなりのフレッシュ感を補ってやる必要があるんだよ。」


「大根おろしとポン酢で、フレッシュ感にならないの?」

「最初はイケるけど、だんだん水っぽくなって飽きる。」

「ふーん。けど、青ねぎ入れたら更に水っぽくならない?」


「おろしとポン酢は最初から大体水分だけど

青ねぎには水っぽくなるまで若干のブランクがある。

その間に食べ切れば問題ない。」


「食べ切れるかな……。」

「大丈夫。旨すぎて箸が止まらなくなるから。」

「うそー?」


今度はあたしが眉間にしわを寄せていたら

タブレット野郎がテーブルにある、店員を呼ぶ赤いボタンを押した。





「ご注文お決まりでしょうか。」


キムじゃない誰かがそう尋ねてくる。

すると、タブレット野郎がクチパクで 「ちゅうもん」 と急かしてくる。

……何だっけな。





「……おろしポン酢牛丼の、中盛。」

「おろしちゅーもりがー、おひとつ。」

「はい。で……ねぎ。」

「青ねぎでよろしいでしょうか?」

「あ、はい。それと……豚汁。」

「豚汁。単品でよろしいでしょうか?」

「はい。」

「同じお値段でお漬物が付いてくるセットもございますが?」

「あーそうなんですか。じゃあそれで……。」



「結構です。単・品・で! お願いします。

あと、今言った3品をもう1つずつ下さい。」





何か急に割って入ってきたタブレット野郎。

店員が去るのを確かめてから、わざとらしくため息をつく。





「5点。」

「なにが。」

「さっきの注文。」

「何点満点?」

「100に決まってんだろ。」

「なんでよ。ちゃんと通ったじゃん。」


「……お前さ、上司に 『結果が全てじゃないんだよ! 効率を考えろ!』 って、

よく言われない?」


「言われる。半月に1回くらい。なんで分かるの?」


思わず、またタブレットを疑ってしまう。

それを見てタブレット野郎が、またわざとらしくため息をつく。


「だから、お前の顔に書いてあんの。タブレットには何も仕込んでない。」

「ほんとー?」

「本題に戻すぞ。さっきの注文、まず 『ねぎ』 じゃなくて 『青ねぎ』 」

「えー? だって青ねぎ以外のねぎ、置いてなくない?」


「メニューに 『青ねぎ』 って書いてあんだから、

その通りに注文すりゃーいいんだよ。

でないと、さっきみたいな 『青ねぎでよろしいでしょうか~』 って言う

ムダなやり取りが出てくるから。」


「なるほど。」

「んで、『豚汁単品』の『単品』抜かすパターンね。これ一番だめ。」

「だからなんで。同じ値段でお漬物が付いてくるなら、いいじゃん。」

「じゃあ聞くけど……。この世における、漬物の食としての存在価値って、何?」

「?! は、箸休め……。」

「生き急ぐ現代のサラリーマンに、箸を休めてる暇なんかないッ!!」

「……お漬物、そんなに嫌い?」

「俺の中で漬物は食い物にカウントされない。」



毅然と言う、タブレット野郎。

京都の錦市場に行ったら発狂するだろうな。









***



「お待たせしましたー。おろし中盛と、青ねぎと、豚汁ですねー。」



そうこう言い合っているうちに、

いつもより大きめの器に入った牛丼と

ポン酢に埋もれた大根おろし(+微々たるネギ)と、意外と多めの青ねぎと

これまた意外と本格的な感じの豚汁が、来た。

タブレット野郎の目の前にも、同じものが置かれている。



「……豚汁、意外としっかりしてるんだね。」

そう呟くと、タブレット野郎がやっぱり眉間にしわを寄せた。

「意外って何だよ。」

「いや、外で食べる豚汁って、あんまり具が入ってないイメージ。」

「ばか。すき家なめんな。食ってみろ。」



促されるままに、ひとくち。

「……うわ、うま。」





普通に美味しい。

豚肉も野菜も、しっかり入っているし。

冷凍野菜やフリーズドライ野菜みたいな、ギシギシした感じもない。

これは、自分で作るより美味しいかもしれない……悔しいけど。





「じゃあ、いよいよメインといきますか。」

そう言うと、タブレット野郎は嬉しそうにお箸を手にした。

「まずは、おろしポン酢を牛丼にザーッとかける。」

タブレット野郎の言うままに、見よう見まねで手を動かす。

「そしたら青ねぎを、半分乗せる。」

「全部じゃないの?」

「全部一気に乗せたら、混ぜるときに収拾つかなくなるから、食べつつ徐々に足すの。」

「そうか、一気に乗せたらフレッシュ感が損なわれるしね。」

「うんうん、お前だんだん分かってきたね。」



相変わらず上からな口調。でも、何故だか悪い気がしない。

きっと……目の前のおろしポン酢牛丼+青ねぎが

すごく美味しそうで心が奪われているからだ。



「そ・し・た・ら・ば! 全体を混ぜつつ思うままに、食うのみ!」



そう言うやいなや、タブレット野郎は超速で牛丼を貪り食い始めた。

もやしな男とは思えないほどの豪快な食べっぷり。

ギャップってやつか……。



「ほまえもはやくくへ」

あっけにとられていたら、何か言われた。

『お前も早く食え』 って……言ったのかな?



……食いますか。



きっと食べ慣れてるひとの真似をした方が美味しいんだろうと思い、

あたしなりの超速で、牛丼を頬張ってみた。





!!!

心に稲妻が走った。





口中にほとばしる、豊満な肉と米の旨味。

大根おろしの瑞々しさとポン酢の酸味が、すこしトゲのあるタレの甘みを

タレの濃厚な味わいを損なわない程度に、上手く、中和してくれている。

その絶妙なバランスのもとに加わる、小気味良い青ねぎの……フレッシュ感!





「うううううっまー! なんじゃこれ! うっまー!!」





絶対嘘だと思っていたのに、本当に美味しすぎてお箸が止まらない。

同じ牛丼のはずなのに、

肉と米の割合、トッピング、そして豚汁が加わることで

こうも違うなんて……ッ!





「ほまへ、くーの、はやふひ。 (お前、食うの早すぎ。)」

「はんはひ、ひはれたふなひ。 (あんたに、言われたくない。)」

「ほまへ、ほんならお? (お前、女だろ?)」

「ふるさひ! (うるさい!)」



食べるのにお互い夢中で、二言三言しか会話をせず、時間は過ぎていった。










***



ほぼ同時に食べ終わった頃には、もう本当に日付が変わろうとしていた。



「信じらんねぇよ。女で、俺と同じスピードで完食するなんて。」

「普段は違うの。あんたにつられたの。」

「絶対嘘。食い慣れてる感じがしたもん。あーあ、マジで信じらんねぇわ。」

「何もそこまで否定しなくったって……。」



本当だもん。

普段はそんなにがつがつ食べる方じゃないの。

ただね、あんたが目の前で、本当に美味しそうに食べてるのがね、

単純に 「いいな」 って思って、ついて行きたくなっただけなの。


そう思って凹んでいると、タブレット野郎がフッて笑った。

分かんないけど、たぶん、優しい感じで。



「否定? してないけど?」

「え?」

「おもしれぇよ。お前と競い合う感じで食うの。」

「おもしれぇ……?」

「お前、いつもこの位の時間に、すき家で晩飯してんの?」

「……うん。」

「じゃあ、またやろーぜ。すき家タイマン。」



そう言って、ふいにイー感じに、ふわって笑うもんだから。

どうかしてると思いながらも、「持ってかれそう」 になる。

今日会ったばっかの、すき家バカの、名前も知らない、もやしな男に。





―――あ。

今日会ったばっか、じゃなくなった。

日付変わった。





オルゴールが鳴ってる。





すき家のからくり時計。

1時間おきに鳴るんだけど、結構音質がいい。





「すき家のからくり時計のオルゴール、結構音質いいよね。」


心臓が跳ねた。

あたしが今まさに言おうとしたこと、タブレット野郎が呟いたから。


「あ、え、うん。そうだね。」

「ちゃんと、すき家のテーマソングになってるところもイカすよね。」

「え!?」

「知らなかった? ほら、よーく聞いてみ?」

「『……すっきでっす、すーき、でぇーすぅ』 ……あ、ほんとだ。」

「ね?」

「『だからいっしょに、たーべーよーぉーー』 ……うわ! ほんとに、歌のまんま!」

「もうすぐ終わるよ。」










「「す き や の ぎ ゅ う ど ん ♪」」





ハモった。

うそ。





「……なんであんたも歌うの。」

「だめ?」

「だめ、じゃないけど……。何か、あんたのキャラじゃない。」

「そうね。」

「じゃあ何で。」

「お前につられた。」

「何それ。」

「何だろね。おもしれぇね。」

「からくり時計?」

「ううん。」

「じゃあ何?」





何故だかイライラして、だんだん詰問みたいになって

ヤバいな怒られるかなって思っていたら、



また、ふわっ、って笑って。










「おもしれぇね。」



目ぇ見て言われた。




















持ってかれた。




















ACT4に続く。

※参考文献:すき家公式HP

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by ikako_pa_rara | 2012-09-23 00:26 | Fiction.

TOKYO SUKIYA LOVE STORY (2)

「すき家のことは……ホントに、ホントに、大好きなんです……ッ!!」



「ちょ、え、お前なんで泣いてんの!?」



「好きだから……だから……。

だからもう行かないって決めたの!!」





――TOKYO SUKIYA LOVE STORY.















ACT2:東京社畜のタシナミ  ~予感~



***



【主な登場人物(詳細適当)】


・吉野 松子(ヨシノ マツコ)
主人公。女。入社三年目にして社蓄。でも、そんな自分が嫌いじゃない。
会社最寄りのすき家店員「キム」が気になる。



・キム
松子の会社最寄りのすき家店員。チャングンなんとかさんに似てる。



・タブレット野郎
すき家で松子の隣に居たリーマン。もやしでメガネの男。バカでかいタブレットを所有。Twitterで松子をdisる。










【これまでのあらすじ(超粗め)】

とある残業帰りの平日23時。東京でハイパーにメディアをクリエイトしている吉野松子(24)は、今日も会社最寄のすき家に居た。お目当ては店員のキムであり、牛丼では無い。キムを舐め回すように眺めまくる一方で牛丼は残しまくる松子。すると松子の隣に座りバカでかいタブレットでTwitterをしていたリーマンが「牛肉の配分をミスったダサいひとww」と、松子をdisるツイートをする。それを見た松子はブチ切れ。リーマンからタブレットを奪い取り「バカでかいタブレットでTwitterしてる方がダサい!」 と盛大にシャウト。果たして松子の運命は??










***



「こんなバカでかいタブレットで

Twitterやってる方がだっせぇんだよっ!!」





タブレットを奪い取って怒鳴るあたし。

それを呆然と見上げるタブレット野郎。そして。

無表情で私達の間に入る、キム。



「スイマセーン。

ホカノ、オキャクサンノ、ゴメイワクニナリマスノデー。

オカイケーコチラデスー。スイマセーン。」





いつもに増して事務的なトーンで言うキム。

明らかに迷惑そう。

あーあ、完全、嫌われた。

終わった。あたしの恋、終わった。

もう、すき家来れないじゃん。

最悪。





「オ、オキャクサン、720エンのオツリ……。」

「結構です。」



キムの顔も見ず千円札だけ渡して店を出る。

そして、走る。

高校の頃は、陸上部に憧れていた生物部だったから

嫌なことがあると、とりあえず走るんだよね。









***



「待てコラーーー!!」





後ろから、男の怒声が聞こえる。

何で?? お金払ったよね?? 

しかも720円余計に。



「ターーブーーレッーートーーー!!」





!!!

いつの間にか小脇に抱えていた、

バカでかい板(若干邪魔)の存在を思い出す。

何か走りにキレがないと思ったら、こいつのせいか。





あたしに追いついて、ぜーぜー言ってるタブレット野郎に

バカでかい板を手渡す。



「失礼いたしました。お返しいたします。」

「あぁ……ほんっとに……失礼極まりねぇ。」



それをひったくるように受け取るタブレット野郎。

ぎっ、と寄った眉間のシワが、

ヤツの人相の悪さに拍車をかけてる。



だから、ついイラッとして、

ほっときゃいいのに歯向かってしまった。










***



「あんたも大概失礼でしょ? 

Twitterで人のこと密かに小バカにして。」


「あのね……。人のTwitterを無断で覗いたり、

公衆の面前で人のこと、

『だっせぇ』って怒鳴りつけたり、

挙げ句、人のタブレットをパクって逃げようとした

オマエにだけは言われたくない。」


「覗いてないし! 見えたの! 

そのタブレットがバカでかいから!」


「オマエどこまでも失礼だな! 

俺のことは何と言われようと知ったことねぇけど、

このタブレットと、あと、

すき家を冒涜するやつだけは許さねぇんだよっ!!」



一気にヒートアップ。タブレットがまさかの地雷とは。

意味分かんないし。マジでオタクめんどいし。

しかも、何でここですき家が出てくんの??



「ぼっ……冒涜って大げさな。

それに、すき家に関してはむしろ崇拝してるわよ。

平日毎日通ってんだから。」


「崇拝してる人間が肉の配分ミスるかよ。」


「ミスってんじゃないわよ。美味しくないから残してんの。」


「やっぱ崇拝してねーし!! 

あーもう、頭きたわ!! 

オマエ、ちょっとツラ貸せ!!」


「えっ!? ちょ、ちょっと何すんのよ!」



もやしとはいえ、興奮気味の男に

いきなり腕を掴まれたので、かなり焦る。

ほんとに、さっきから何をそんなにアツくなってんの??










***



「何する気!?」


「決まってんだろ、すき家行くんだよ!

そんでな、オマエのすき家に対する冒涜精神を

叩き直してやる!!」


「はぁ!? 意味分かんないし!

てゆーか、さっきすき家行ったばっかじゃん! 

そんでキムに嫌われたし! 戻るの恥ずかしいし!」


「ばか、戻るわけねーだろ。つーかキムって誰だよ。

さっきの店とは別のすき家だよ。

あのデパートから、向こうに走ってる高速の下を横切る感じで

5分ちょっと真っ直ぐ歩けば、あるから。」


「ああ、そーなの? 知らなかった。」


「会社付近のすき家は、最低2店舗は把握しとくのが

東京社畜のたしなみだぜ。

分かったら、さっさと行くぞ。」





いやいや、何ひとつ分かんないし。

本気で意味分かんないし。

けど。

何となく、ついて行くことにした。





どーせ社畜だし?

明日休みなのに、どーせ予定ないし?





それに、何となくだけど。

もっと、知りたくなったの……。










すき家のこと。















ACT3に続く。

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by ikako_pa_rara | 2012-08-29 19:26 | Fiction.

TOKYO SUKIYA LOVE STORY (1)

「俺達の仲」に

歪(ひず)みを作ってしまったのは

わたしから。そして

わたしだけ。





きみは気づかない。





「嫌い」はひとつで

「好き」はふたつ。





厄介なほうの「好き」を

抱えてしまったのは

わたしだけ。





きみは気づかない。





――TOKYO SUKIYA LOVE STORY.















ACT1:すき家なう。~出逢い~



***



「あーー超お腹減ったしっっ♪♪」





なあんて、昔流行ったネットスラングを

天を仰ぎながら絶叫するあたしは

吉野 松子(ヨシノ マツコ)。



トーキョーでハイパーにメディアを

クリエイトしちゃってる(仮)

24歳! 女子! 社会人三年目! 



三年目に入ってからウルトラ残業まみれで

今日ももう23時! やんなっちゃう!





なあんて、ね。

ホントはそんなに、嫌でもないんだ。

あたしには、これから「おたのしみコース」が待ってるから。



「おたのしみコース」ってのは、ね。

Pバルーンを駆使してブルとポンキーを

避けて避けて避けないとクリアできない

あの「おたのしみコース」じゃなくって、



23時にすき家でゴハンを食べること。





え?

「そんなに牛丼が好きなのか。」って?

ううん、牛丼なんて、どうでもいいの。

専らあたしのお目当ては、

23時にいつもすき家に出勤している

チャン・グ●ソク似の彼、キムさん。





キムさんに水をもらい、注文を聞いてもらい、

丼をもらい、お金を渡す。

それだけのために、あたしは平日の23時。

毎日会社最寄りのすき家に通っている。









***



「イラッシャイマセー。ゴチュウモン、ドウゾー。」

慣れた手つきで、あたしに水をくれるキム。

「並ください。」

メニューも見ずに答えるあたし。



だって興味ないし。

ここに居て、キムを眺める権利を得られるなら、

丼の中身なんて、別に何だっていいし。





「ナミイッチョー!!」



調理スペースに向かってそう叫ぶキムは、

今日もあたし史上最強に、ワイルドかつクール。

そんな余韻に浸りながら、キムがくれた水をひとくち飲む。

プラスティック製のグラスはいつも良い具合に滴っていて、

若干のエロスを感じてしまうのは何故だろう。

キムがかっこいいから?? それとも今が23時だから??

まぁ、どっちでもいいけど。グラスの微々たるエロスより

今はキムのイ・ロ・ケ☆





「ナミデース。」



キムが並を運んでくれた。

嬉しい。

でも、あたしはどうしても、この丼を好きになれない。

たっぷりすぎる白ごはんに、ほんの少しのお肉。

延々と続く、薄甘い醤油味。

いつもスプーン5杯くらいで飽きちゃう。

今日も薄汚れた感じの白ごはんが、かなり残ってしまった。

これで280円は正直痛い。

でもまぁ、キムのことを思えば全然だよね。










***



「アリガトーゴザイマース。オカイケーコチラデスー。」

あたしが立ち上がると同時に、

キムがあたしをレジへと誘導してくれる。

嬉しいな。



いそいそと鞄を持ち上げ、ようとしたら。

「あ、ごめんなさい。」

隣の人のタブレットに鞄をぶつけてしまった。



「………。」



タブレットの持ち主に睨まれる。

あたしと同い年くらいの、四角い黒ぶち眼鏡のリーマン。

もやしな感じ。神経質な感じ。

やな感じ。





ほんと、やな感じ。謝ったじゃん。

こんな狭いお店で、そんなバカでかい

タブレット使う方が悪いんじゃん。

食事に集中しろっての。



って言ってやりたかったけど、

この人、人相悪いし

ナイフとか持ってそうだったから、押し殺した。

代わりにタブレットを睨みつけてみる。





===================================
すき家なう。隣の女が並をメッチャ残してる。すき家への冒涜だ。つか、女はすき家に来んな。品位が損なわれる。
===================================










***



……Twitterかよ。

こんなバカでかいタブレットで敢えてTwitterかよ。

そして内容、明らかにあたしにケンカ売ってるし。

何ですき家に女が居たら、品位が損なわれるのよ。



てゆーか、すき家の品位って??



まぁ、どうでもいいけど。どうでもいいけどさ。

売られたケンカは買う主義なんだわ。





鞄を置き、席に着き直す。

キムがレジで、えっ、てなってるけど、仕方無い。

スプーンを手に取り、薄汚れた白ごはんに

とりあえず喰らいつく。



薄甘い……。延々薄甘い……。

無理。





「……ククッ。」



!!!

え、なに。

今、隣のタブレット野郎、笑った??

反射的にタブレットの画面を覗く。





===================================
隣の女が肉の配分ミスったのか黙々と白飯だけ食ってるwwwだっせぇwww
===================================










「こんなバカでかいタブレットで

Twitterやってる方がだっせぇんだよっ!!」






タブレットを奪い取って怒鳴るあたし。

それを呆然と見上げるタブレット野郎。





――こうして、あたしの「すき家ストーリー」は

幕を開けたのだった。










ACT2に続く。

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by ikako_pa_rara | 2012-08-08 00:02 | Fiction.

デパートは3

◎Attention◎

ウルトラ雑多! 白目向くかも!
















***





いぬやねことあそんでいました。

いぬはふわふわ、ねこは2ひき。

たのしい。





「あ、いた! ちょっと!

5時からホームルームだって言ったじゃん!

また忘れてるんだから!」





たのしかったのに、たのしくなくなった。

あそんでいたら、しらないひとに、おこられて、つれていかれる。

このひとは、おとこのひと。しらないひと。





おとこのひとについてったら

つくえと、いすが、たくさんあって、

しらないひとがたくさん、すわっていました。
















***





ここは、学校です。

学校には、決まりや宿だいがたくさんあって、

決まりや宿だいを忘れると、先生や、同じ班の子におこられます。

わたしは5時から集まるという決まりを、わすれて、

犬やねこと遊んでいました。

だから、班の子がきてくれたのです。

おもいだしました。また、わすれていました。

ごめんなさい。





「じゃあ終わりの『トレーニング』をしよう。

今日はプリントの○○ページ。

ここに書いてあること、

班のみんなで覚えるんだよ。では、始め!」





先生が言いました。

すると、みんな、水色の本を読み始めました。

みんなが持ってる本、わたしは持ってない。なんで。





「プリント忘れたの?」

班の子、さっき来てくれた男の子が言います。

「もらってないよ」

「もらってないんじゃないよ、忘れてんだよ!」

またおこられました。

ごめんなさい。でも本当に、もらってないのに。





「ふふ、こいつにそんなこと言っても分かんないって。」

となりにすわっている男の子が、笑いながら言いました。





「だって、みんなで早く覚えないと時間が、」

「てゆーか、俺もプリント忘れたし。

わりぃけど白田のプリント、貸してくんない?

こいつと一緒に見るから。」

「お前もかよ! 全くどいつもこいつも!」

「早くしろよ、白田は俺らと違って頭いいから、すぐ覚えられるんだろ?」

「……分かったよ。」

「……わりぃね。」

「大和、いいか、絶対覚えろよ! 僕は他の子を見てくる。」





白田くんが向こうに行って、

大和くんが私にプリントを見せてくれます。

「もう時間くるから、早く覚えねーと、ヤバいね。」

大和くんといっしょに、プリントを読みます。










デパートは3

スーパーは2

コンビニは5

ぎんこうは9

ゆうびんきょくは8










デパートは……デパートは……。

だめだよ、こんなの。むずかしくて覚えられないよ。

いや、みんなは、むずかしくない。

でも、わたしは、むずかしい。

白田くんも、大和くんも、覚えられる。

でも、わたしは、覚えられない。

またおこられる。またみんなに、めいわくをかけてしまう。

どうしよう、こわい。覚えなきゃ。

デパートは3、デパートは3、デパートは3、デパートは3、デパートは3……。










「はい、時間だよ。プリントを閉じて。

じゃあ今日は白田の班からね。

5人全員に当てるから、当たった人から、

プリントに書いてあったこと、上から順番に、1つずつ答えるんだ。

5人全員答えられて合格だからね。」

デパートは3、デパートは3。

「じゃあ最初は……」

わたしと目が合った!!

「……嬉しそうだね。やっぱり後にしよう。最初は、伊藤さん。」










「……コンビニは、2?」

いとうさんがいうと、しろたくんが「それ3番目のやつだよ……」と、

ちいさなこえでいいました。

いとうさんがまちがえた。だから、がっこうのじかんは、おしまい。

はやく、ふわふわのやつとあそびたい。















***





がっこうおわって、いぬとあそんでいたら、

しらないおんなのひとがきました。

しらないひとですけど、このひとは、やさしいひとです。





「元気だった? お母さんだよ。」





このひとは、『おかあさん』というなまえの、

とてもやさしい、しらないひとです。





「『おかあさん』さん、こんにちは。」

おかあさんさんは、ちょっとだけ、わらいました。










おかあさんさんは、きいろの、おようふくをきていました。

つまんでみる。

ぴかぴか、きれい。

つるつる、きもちいい。





おかあさんさんが、いいました。





「これはね、ワ・ン・ピ・ー・ス。

お母さんの、お気に入り。

使ってるうちに、だんだん黄色くなっちゃったけど……。

どうしてだろうね??」














***





「……シルクだから。」

「え??」

「シルクの服は、時間の経過と、紫外線の影響により、

絹繊維中のタンパク質が、酸化することで、黄変する。」










「……何でシルクだって分かるの。」

「触れば分かるよ。いつも仕事で使ってるし……。」





え。

仕事。





仕事??










「あたし、仕事、してた??」










「してた! してたよ!

あなたはね、大きくて立派な会社で、

毎日遅くまで難しい実験をね、してたの!

お母さんの、誇りだった……っ!」


「ちょ、ちょっと母さん落ち着いてよ。

急にどうしたの? 何で急に泣くの?」


「……お母さんがお母さんだって……。

今日は、分かるのね?」


「今日は、って? わけ分かんない。

母さんは、いつだって、母さん以外の何者でもないでしょう。」


「うん、うん。ごめんね、そうだね。」


「あーもう、泣かないでよ。

てゆーか、あたし何してたんだろ……。

まーいーや。母さん、うちに帰ろう?」





そう言ってあたしが、笑い泣きみたいになっている

母さんの手を引こうとすると、

母さんは突然真顔になって、あたしの手を振り払った。





母さんは、唇噛み締めて、震えている。





「ごめんね。本当はすごくすごく、連れて帰りたいんだけどね。

……ここにいれば、今度こそ、

元のあなたが戻ってくるかもしれないから――。」


「元のあたし? 何それ。」


「………。」


「黙ってたら分かんないでしょ。

ねぇ、元のあたしってどういうこと?」





あたしが尋ねても何も答えてくれない母さん。

手を震わせ、左手に持っていた小さなノートを落とした。










そこに書かれていたこと。





白田は14

大和は11

近藤は6


あたしは8










正常値16~










『記憶指数』










【記憶指数が正常値から減るにつれ、これまでの記憶が徐々に消失すると同時に、言動・行動・感情等が退行していく。また、新たな記憶をすることが困難になる。】















***





――嗚呼、また、思い出した。





突然、物忘れが激しくなって。

あらゆる病院を転々としても、

回復どころか原因すら分からなくて。

そしていつしか、ここ、

『記憶指数開発センター』に辿り着いた。





表向きには『全寮制学習塾』。医者もカウンセラーも居ない。

胡散臭いのは分かっていた。

でも、他の手立てを考える余力など、もはや母にはなかった。





原因不明のまま、日に日に退行していく我が子を黙って見ているのが、

母にはもう、限界だったのだ。

もちろん、あたし自身も。










あの日以来、あたしは

いろんなことを忘れ、いろんなものを失い、

退行するだけの日々を過ごしている。

それでも時々、何かしらのきっかけで、

こうして『一時的』に、記憶と理性が戻る。





でも、こんなこと思い出したって、どうにもならない。

思い出しても、つらいだけ。

だったら、「つらい」が、分かんなくなるくらいに。

もう、何にも、二度と、分かんなくなるくらいに。

あたしのこと、はやく、完全に。





ぶっ壊せよ!










「ねぇ、泣かないで。お母さんだって、つらいの。」


「うそつけ!!!










分かるわけない、分かってたまるかよ!!

あんたには未来があるんだから!!

あたしが完全にぶっ壊れた後の未来が!!

ぶっ壊れるのはあたしなんだ!! あたしだけなんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」




















***





ねていて、おきたら、

しらないおんなのひとが、わたしを、だっこしてくれてました。

とてもやさしい、しらないひと。なまえは、わすれました。





ごめんなさい。




                               

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by ikako_pa_rara | 2012-07-19 22:06 | Fiction.


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