アイ

『好きなひとに送るバースデーメールは午前0時ジャストに限る』

――そう思っていた時代が私にもありました。





7年前。20歳の誕生日。午前0時を迎えた瞬間、同じサークルの同期の野郎達から一斉にバースデーメールが届いた。人生で最初で最後と思われる、あり得ない数のメールが、一気に来た。



深い意味はない。あるはずがない。いくら彼氏いない歴=年齢でもね、こんなことで、こんなことぐらいでね、はしゃいだり……するよね、やっぱり。ええ、すごく嬉しかったし、すごくドキドキしてジタバタしましたとも。



だってさ、深い意味はなくても、「0時ジャスト目掛けて、ケータイの送信ボタンを押して待っていてくれていた、私の誕生日を祝うために。」

ってことは、事実だから。

それだけで、もう十分「アイ」だと思った。それだけで、もう十分過ぎるくらい、嬉しかった。ドキドキした。



でもやっぱり、午前0時に「送る側」になるほうが、ドキドキしたね。









7年前の、とある夜。決行前夜。1週間以上前から練りに練りげてきたバースデーメールを眺めつつ、送信ボタンを押すイメトレをしつつ、ひとり悶々。

何が何でも午前0時、否、午前0時0分0秒に送らなきゃ。0.05秒でも遅れたら意味がない。数番目じゃ意味がない。だって。

だって、このメールの向こう側のひとへは、特別で、大切で、絶対手放したくない「アイ」があるから。

あのひとの○○歳のバースデーは、一度きりの今日。今日くらいは、頑張ってみようと思うの。普段は素直になれなくて、臆病で、絶対見せられない「アイ」を、午前0時0分0秒受信のバースデーメールに、こめたいの。



だからこうして1分前からケータイ握りしめて待っているわけさ……30、20、10……3、2、1、セーイ!! 送~信ッ!! 

よしッ、よしッ! ちゃんと送信時間0時ジャストになってるなッ!! ミッション・コンプリートやなッ!! 



……でも待てよ。

冷静に考えたら、彼女でもないのに、ただのサークルの同期やのに、0時ジャストにバースデーメールって、どうなん??

うわうわうわ! やばい、急にめっちゃ恥ずかしくなってきた。

だってさ、0時ジャストはガチですやん! ナントカさんとかスントカさんとか、ああいうリア充な子らがやる分にはノリとして問題ないけど、あたしみたいな地味キャラがやったら、何かガチですやん! 絶対キモがられるし! あたしみたいな地味な干物からガチのバースデーメールとか、絶対キモがられるし! 



って! 

うわああああ、あのひとから返信きたし! どうしよう、嬉しいけど怖い。読みたいけど読むの怖い。「キモいです死んでください」って書いてあったらどうしよう。

怖いから手で隠しつつ、一文字ずつ読もう。『死』とか見えたらケータイ捨てよう。えーと、『あ』『り』『が』……『ありがとう☆イカちゃんが一番乗りだよ!めっちゃ嬉しい!(^o^)』!?



セーイ!! 彼の一番、いただきましたーッ!!










――なんてね。

そうやって、たった一通のメールごときでドキドキジタバタした時代が、私にもありました。



ありました、ね。
いまは、ちがう。

いまは、もう、送信ボタン押さえて待たなくても、いいから。



それは去年の秋。2年ちょっと付き合ってる彼氏のバースデーを間近に控えたときのこと。


「前は早朝4時とか、めっちゃ微妙な時間にメールしてきたよな。0時に送ってくれんかったよな。」

「……そうやっけ??」

「……覚えてもないの?? ほんまイカはアホ……」

「ぁあー、もう、覚えてるやん! 0時に送ろうと待ってたけど、仕事で疲れてて寝ちゃったの! あの時も謝ったやん! 昔のことほじくり返さんといて!」

「冗談やん。またそうやっていちいち怒るやろ~。ほんまイカええ歳なんやから、落ち着いてよ。」



どんな会話をしても、しぼんでいく感じ。いちいちお父さんみたいに説教してくるのは、そっちやん。いっこも楽しくない。

0時ジャストにバースデーメール送るテンションなんか、あるはずなかった。

でもな、今年も送らんかったら、あのちっこいおっさんは確実にま~た、ぐちゃぐちゃ言うんやで。「俺のこと本気で好きちゃうんやろ」とか、言うんやで。

あーあ、めんどくせぇな。0時にメール送ってから電話かかってきたら、もっとめんどくせぇな。話すことないのにな。あーあ。



でもな、普段ろくに会話してない分、メールくらいは「盛らんと」な。

デコメって便利よなぁ。こうやってさ、うさぎさんが目ぇキラキラさせてハート抱えてるやつとかをさ、ちょいちょいちょいちょーい、って入れたらさ、ほらもう、めっちゃ好きで~す、ラブで~す、って感じやん??

あたしが笑えんでも、うさぎさんがナンボでも笑ろてくれるからな。「アイ」が表現しやすい時代になったわ。



あ、変なボタン押しちゃった。ん??『送信予約』って??

え! これはもしや、セットしといたら0時ジャストに送れる、的な??

ちょいちょいちょいちょい、マジでマジで1回テストしてみよ……うわ、メール来ましたやん。ひゃあー。べんりー。スマホすげー。

これで今年は説教無しやな。寝よっと。



翌朝。彼から返信が来ていた。私が送ったやつより数倍デカい、うさぎさんが飛んでいた。スマホに感謝した。怒られなくて良かったと思った。



後日会ったとき、彼は大層機嫌が良かった。相変わらず口数は少ないし大して盛り上がりもしないが、説教にはならない。

そりゃそやな。だって今日からは、さよならするとき新幹線に乗らなくていいもんね。あたしが、めっちゃ、頑張ったから。


「これからはいつでも会えるな。」

「いつでも、ってことはないやろ。仕事あるんやし。」

「でも、週末はいつでも会えるやん。違う??」

「………。」

「あ、そうそう。俺の誕生日。今年『は』起きててくれたんやな。」


またそうやって。今年『は』って。

あんたは、そういう『冗談』がほんまに好きやな。
知ってる?? そういうの冗談じゃなくて『嫌味』って言うの。いっこも面白くないの、知ってる??

あとさ、あたし、起きてないから。

起きて『仕事』してくれたんは、あんたの大ッ嫌いなスマホさんやで。あたしがあんたの言う『ネット依存』やとしたら、あんたみたいなんは『情弱』って言うんやで。知ってる??

言ってやろうと思った。でも、言わなかった。言えば良かったのに。言って、大喧嘩でもすれば良かったのに。

言わなかった。言えなかった。やっと近距離にしたんやから。あたしが、あたしが、頑張ったんやから。なのに、今さら、引き返せない。


「もう、またぼんやりしてる。何なん??」

「ぼんやりなんかしてへんよ。」

「嘘やん。最近ボーっとしてばっかり。俺の話、聞いてないやろ。」

「ごめんごめん、きいてるよ。ことしはな、おきてた!」

「来年も起きとくんやで。」

「えー、らいねんは、いっしょに、おいわいできるやーん??」

「……せやな! 来年は会えるな!」

「うん、あえるあえるー!」




いまあたしあのうさぎさんみたいにかわいらしくわらえてるかな。きんにくひくひくしてるからきっとわらえてるよな。たぶんな。わからへんけど。



「アイ」とかもう、わからへんけど。



*************



おいおい何だね!  この誰得な長文は!

私も自分で書いておいてよく分からんよ!

でもさ、そういう記事を、敢えて書きたくなるときも、あるだろう!

6年もブロガーしてたら1回くらいは、あるだろう!

私はある! 50回くらい! これが記念すべき51回目なのだよ!



えーと、つまり、何が言いたかったかというと、

今はメールもデコメやら送信予約やら、いろいろ至れり尽くせりな感じで、
もっと言えば、Twitterやらfaceなbookやらラインやら、便利なツールがわんさかあって、気持ちを伝えるのが、お気軽に、簡単に、分かりやすくなった、けれどもその分、伝えるべきものを隠せちゃって、一方伝わんなくていいことまで漏れちゃったりもして、なんだかねぇ。(長い)

み・た・い・な??



ヘイセイ生まれのヤング達は、時計とにらめっこしながら、送信ボタンを押さえながら0時を待つこともなかったのかな。

み・た・い・な??



あたしが頑張ったあたしが頑張った、って、いま思えばすっげぇおこがましい生き方してたな。たぶんあたし全然笑えてなかったんだろうな。だからろくでもない会話しかできなかったんだな。

み・た・い・な??



GLAYの『SOUL LOVE』のカップリング曲、『アイ』は名曲だよ。作詞作曲:HISASHIだよ。あの青く尖った髪型に思春期のイカ少年は心奪われたものだよ。

み・た・い・な??















ほんとなにこれ。
[PR]
by ikako_pa_rara | 2012-05-20 01:45
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